四竜帝の大陸【青の大陸編】
音がするほど強く額を重ね合わせ、首を鷲掴みにする。
「嫉妬でここの血管がブ千切れそうだったよ」
君は俺のつがいだ。
その髪1本だって、他の雄に渡したくない。
「あら、そうなの。切れなかったなんて、ちょっと残念ね……なら、今すぐこの鋏で切ってあげるわよ?」
俺のこめかみに鋏の先端を当てながら、カイユは言った。
こんな間近でも目を閉じることなく、反らすことなく俺を見る。
怯まず、引かず。
カイユは真っ直ぐに、いつだって俺を受け止めてくれる。
「そういうのも悪くないけど、今は時間が無いからね。また今度にしておくよ」
肩に届かぬほど髪を短くするのは、つがいを失った雌竜だけだ。
今のカイユの髪は、他の竜族達から見れば奇異なものとして映るだろう。
「君のその髪、舅殿が見たら卒倒するな」
長く美しい髪は、竜族の雌にとってとても大切な……意味のあるものだ。
愛娘のこの姿をあの舅殿が目にしたら、俺がボコられること間違い無しだなぁ。
「父様じゃなく。ダルフェ、貴方はどう思うの?」
カイユの水色の瞳は、奥底まで澄み切っていて。
迷いも後悔も見当たらない。
「そんなの決まってるさ」
合わせた額を離し、短くなった髪へと触れた。
「短い髪の君も、最高に素敵だよ」
こんなに。
こんなにも。
「そう、なら問題ないわね」
君は、美しいと。
君は、美しいのだと。
「愛してるわ、テオ」
伝えきれないもどかしさ。
そのもどかしさは、俺の心を優しくくすぐる。
「知っているよ、アリーリア」
だから。
俺は、生きていられるんだ。
君の愛が、俺を生かしてくれている。
そして俺を殺すのは。
俺を飲み込む、君への愛。
「行きましょう、ダルフェ。子供達のところへ」
「あぁ、行こう。カイユ」
数十分後に飛び立った俺達は、城の尖塔の先端に立って手を振る青い竜の周りを旋回してから高度をあげた。
振り返らず、前だけを見て。
鱗の一枚一枚に風を感じ、翼で大気の歌を聴きながら。
夕闇を切り裂くように、沈む陽に染まる青の大陸を後にした。
「嫉妬でここの血管がブ千切れそうだったよ」
君は俺のつがいだ。
その髪1本だって、他の雄に渡したくない。
「あら、そうなの。切れなかったなんて、ちょっと残念ね……なら、今すぐこの鋏で切ってあげるわよ?」
俺のこめかみに鋏の先端を当てながら、カイユは言った。
こんな間近でも目を閉じることなく、反らすことなく俺を見る。
怯まず、引かず。
カイユは真っ直ぐに、いつだって俺を受け止めてくれる。
「そういうのも悪くないけど、今は時間が無いからね。また今度にしておくよ」
肩に届かぬほど髪を短くするのは、つがいを失った雌竜だけだ。
今のカイユの髪は、他の竜族達から見れば奇異なものとして映るだろう。
「君のその髪、舅殿が見たら卒倒するな」
長く美しい髪は、竜族の雌にとってとても大切な……意味のあるものだ。
愛娘のこの姿をあの舅殿が目にしたら、俺がボコられること間違い無しだなぁ。
「父様じゃなく。ダルフェ、貴方はどう思うの?」
カイユの水色の瞳は、奥底まで澄み切っていて。
迷いも後悔も見当たらない。
「そんなの決まってるさ」
合わせた額を離し、短くなった髪へと触れた。
「短い髪の君も、最高に素敵だよ」
こんなに。
こんなにも。
「そう、なら問題ないわね」
君は、美しいと。
君は、美しいのだと。
「愛してるわ、テオ」
伝えきれないもどかしさ。
そのもどかしさは、俺の心を優しくくすぐる。
「知っているよ、アリーリア」
だから。
俺は、生きていられるんだ。
君の愛が、俺を生かしてくれている。
そして俺を殺すのは。
俺を飲み込む、君への愛。
「行きましょう、ダルフェ。子供達のところへ」
「あぁ、行こう。カイユ」
数十分後に飛び立った俺達は、城の尖塔の先端に立って手を振る青い竜の周りを旋回してから高度をあげた。
振り返らず、前だけを見て。
鱗の一枚一枚に風を感じ、翼で大気の歌を聴きながら。
夕闇を切り裂くように、沈む陽に染まる青の大陸を後にした。