鉄の島
序章…怪魚
日本、K県の沖、太平洋某所。
その辺りでは、数年前から変な魚が取れると猟師たちの間で噂になっていた。
K県で一番大きい魚市場。
年中賑やかなそこの片隅に、
一つの大きな鉄の箱が置いてある。
日の当たらないその一角だけは、とても暗くて寒い。
近づくだけで背中に悪寒が走る場所だった。
そこに、一人の中年の猟師が小走りでやってきた。
鱗がついた長靴。湿ったコンクリート。
彼は、大きく×を書いたトロ箱を持っている。
そして胸の上まで両手でトロ箱をあげ、中の魚を ザザーッと鉄の箱に入れた。
彼はその1、5メートル四方の箱をいつものように覗く。
本当は覗きたくないのに覗いてしまう。
その赤錆た箱の中には、彼が入れた魚の下に、
先に他の猟師たちが入れた、生き物として形容しにくい「何か」たちがうごめいていた。
彼は、その「何か」のうちの一匹と目が合った気がして、思わず後ずさった。
そして足早に立ち去る。
どの猟師もそれに言いようのない恐怖を抱いていた。
数年前から沖合で取れるようになった「何か」は、猟師たちにとって忌まわしいものでしかなく、
決して口外しないというのは暗黙の了解であった。
暫くは闇に葬られる胎児のごとく、
ただ処分していたが、
あるとき突然、
「大森」と名乗る人物が現れた。
彼がそれを全て引き取ってくれ、しかも多額の謝礼を払うということが決まったときは、
ただ皆 心底ホッとした。
その辺りでは、数年前から変な魚が取れると猟師たちの間で噂になっていた。
K県で一番大きい魚市場。
年中賑やかなそこの片隅に、
一つの大きな鉄の箱が置いてある。
日の当たらないその一角だけは、とても暗くて寒い。
近づくだけで背中に悪寒が走る場所だった。
そこに、一人の中年の猟師が小走りでやってきた。
鱗がついた長靴。湿ったコンクリート。
彼は、大きく×を書いたトロ箱を持っている。
そして胸の上まで両手でトロ箱をあげ、中の魚を ザザーッと鉄の箱に入れた。
彼はその1、5メートル四方の箱をいつものように覗く。
本当は覗きたくないのに覗いてしまう。
その赤錆た箱の中には、彼が入れた魚の下に、
先に他の猟師たちが入れた、生き物として形容しにくい「何か」たちがうごめいていた。
彼は、その「何か」のうちの一匹と目が合った気がして、思わず後ずさった。
そして足早に立ち去る。
どの猟師もそれに言いようのない恐怖を抱いていた。
数年前から沖合で取れるようになった「何か」は、猟師たちにとって忌まわしいものでしかなく、
決して口外しないというのは暗黙の了解であった。
暫くは闇に葬られる胎児のごとく、
ただ処分していたが、
あるとき突然、
「大森」と名乗る人物が現れた。
彼がそれを全て引き取ってくれ、しかも多額の謝礼を払うということが決まったときは、
ただ皆 心底ホッとした。