鉄の島
大森の条件は三つあった。
捕ったすべての「何か」を鉄の箱に入れること。
詮索しないこと。
他言無用。
それを守りさえすれば、猟師たちに一晩贅沢できるだけの金が配られた。
しかし二年前、「何か」の正体を調べようとした男がいた。
その男、金田は、まだ若かった。
頭の良さから一度は都会に就職したものの性に合わず、28歳でK県に戻り祖父の跡を継いで船に乗っていた。
彼は学歴からくる好奇心と、船乗りとしての経験の乏しさから、
三つの契約を破ってしまう。
生きたまま捕獲した「何か」を自宅に持ち帰えり、勤めていた東京の会社の同僚の知り合いのマスコミに知らせようとした。
しかも、トラックで鉄の箱を取りに来る大森の跡を追跡した。
もし祖父が気付いていたら彼を止めただろう。
しかし気付いたのは、孫が穏やかな日の海で、
右手の一部を残して漁船から姿を消し、
船に隠してあった一冊のノートを見つけてからだった。
祖父は孫の葬儀が終わった夜、
花と酒とノートを海に投げ入れた。
海がまた秘密を飲み込んだ。