最後の恋、最高の恋。

きっと坂口さんは見つけたんだろう。


時間を置かずにもう一度携帯が震えた。

大きく深呼吸してから通話ボタンを押して、相手が何か言う前に「すいませんでした」と謝罪する。


『ううん、別にいいんだけど電波悪かった?』

「いえ、つい電源ボタン押してしまいました」


正直に白状すると、怒るでもなく逆に吹き出して笑い始めた坂口さんは「それはうっかりだね」とよく分からない同意をしてくれる。


『美月ちゃん、車の座席に忘れ物があったんだけど』


やっぱり坂口さんは見つけたから連絡をくれたみたい。

わざと置いていった、ラッピングされたモノ。
坂口さんのお姉さんの店で買った、プレゼント。


帰りはなんだか直接渡せなくて、出るときにさりげなく置いてきたもの。



「それ、坂口さんへのお礼です」


お姉さんと坂口さんがレジを挟んで無言の攻防をしていた時に、目についてなんだかとっても坂口さんにぴったりだと思って買ったものだ。
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