最後の恋、最高の恋。
シンプルな茶色の革のキーケース。
ワンポイントで黒のウサギのシルエットが刺しゅうされている。
少し乙女チックかなとも思ったけれど、パッと見は普通のキーケースにしか見えないし、なんだかどうしても坂口さんに買ってあげたくて買ってしまったものだ。
そして、おそろいの赤の革のキーケースを自分用に買ってしまっていたりする。
私のは黒の猫のシルエットが刺しゅうされているんだけど。
『開けていい?』
「どうぞ」
私の言葉を聞くなり、ガサガサと開ける音が微かに聞こえた。
こういうときって、すっごくドキドキする。
ましてや今目の前に彼はいなくて、どんな反応をしているのかさっぱり見当がつかないから。
『……キーケースだ』
心なしか、少しだけ声が弾んだ気がするのは私の気のせいだろうか。
それとも私が喜んで欲しいと思っているからそう聞こえただけ?