最後の恋、最高の恋。
壊れたブリキのおもちゃみたいに、ギギギと音が鳴りそうなほど不自然に振り返れば、やっぱりさっきと変わらない優しげな笑顔を浮かべた黒髪イケメン、坂口さんがそこにはいた。
「……なぜここに?」
ひくひくとひきつる口を無理やりあげて、笑いながら尋ねてみても、
「可愛い女の子がいるなぁって思って店に入ってみたら、美月ちゃんだった」
と、明らかに嘘だと分かる言葉を並べられて、さらに口元がひきつる。
「……お姉ちゃんですか」
思わずため息がこぼれる。 お姉ちゃんはあれだけイイ女なのに、自分に向けられる好意には呆れるくらい鈍い。
きっとお姉ちゃんに押しに押されて、ここに来るほかなくなってしまった坂口さんが、本当にかわいそうに思えてきた。
「すいません、お姉ちゃんホント鈍くて……」
「ん? なにが?」
何故か謝ってしまった私に、坂口さんは大人な対応でとぼけてくれる。
ホント、お姉ちゃんあそこまでオススメするんだったら自分が付き合ってあげなよ、と思ってしまう。