最後の恋、最高の恋。


「あとでさりげなくお姉ちゃんに坂口さんをおすすめしておくんで、帰っていいですよ」


言いながらさっきまで悩んでいた二つのマグカップを坂口さんの前に差し出す。
突然目の前に差し出されたマグカップに視線を落としてから、首を傾げた坂口さんに、


「こっちとこっち、どっちが私に似合うと思います?」


と尋ねた。
お姉ちゃんがいないから、この際坂口さんに決めてもらおう。

お姉ちゃんに言われて仕方なく来たのに、何もせずに帰るなんてかわいそうだもんね。 私も自分じゃ決められないし。


少しは悩むと思ったのに、坂口さんは意外にも「こっち」と迷いなくピンクのマグカップを選んだ。
それが少し意外で、「ふぅん?」なんてよくわからない相槌を打ちながら、茶色のマグカップを戻して、会計へと向かう。


「買うの?」

「そうです、買うんです」


何故か私のあとを坂口さんがついてくる。

小さい犬とかが後をついてくるならまだいいけど、こんなに背の高いイケメンについて来られると、店の中の女の子の視線が集まってとても居心地が悪い。
そんな視線に慣れてるのか、はたまた気づいていないのか。
坂口さんは飄々としている。

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