最後の恋、最高の恋。


結局マグカップは坂口さんが買ってくれて、「プレゼント用にしてもらう?」なんて言う坂口さんの腕を無理やり掴んで、逃げるようにその店を後にした。


「はいこれ」


ベンチに座って項垂れている私の膝の上に、さっき買ったマグカップの入った手提げ袋が置かれる。


「ありがとう、ゴザイマス」


なんとなく納得いかないけど、ここでお金を返すのも逆に失礼な気がして素直にお礼を言って受け取った。


「美月ちゃん、23でしょう? なんか顔に似合わず達観してるよね」

「……、」


褒められてるのか、貶されてるのかよくわからなくて何も言えずにいると、


「なんか、すっごく人生諦めて生きてるカンジ」


続いた言葉で、“これは貶されてるな”と判断した。


でも、すごい。

さすがお姉ちゃんと同じ会社に勤めるエリートさん、人を良く見てる。
そんなに一緒にいなかったのに、こんな短時間でそんなことを当ててしまうなんて、相当人のことをよく見てる証拠だ。


言葉には出さずに、心の内で感心していたのにそれすらお見通しかのように、「春陽もそれに気付いてるから俺を紹介したんだと思うよ」と更に言葉を続けた。

< 14 / 337 >

この作品をシェア

pagetop