最後の恋、最高の恋。




「美月ちゃん、俺はね、春陽にコンプレックスを持っているのに春陽をそうやって思いやれる優しさが好きなんだ」



簡単に信じちゃダメだって、そう思うのに、トクトクと心臓が徐々に早鐘を打ち始める。

お姉ちゃんのこともあるのに、それすら構わないと思ってしまう。

でも、さっきお姉ちゃんを思やれるって言われたばかりの坂口さんの言葉を否定するみたいで自分の気持ちが怖くなる。



「本当、あれを美月ちゃんに見せてしまったのは悪いと思うんだけど、俺は君が好きだし、あの時春陽に言った言葉は美月ちゃん、君に言いたかった言葉なんだ」


信じてくれ、と言いながら目の前の坂口さんがグッと瞳を閉じた。

それが本当に心からの言葉に思えて、でもお姉ちゃんの存在が、私にストップをかける。



これは、あくまでも坂口さんの言い分だ。

お姉ちゃんの本心が分からない。


もし坂口さんの言っていることが本当だとしても、お姉ちゃんが彼のことを秘かに好きで、あの時にあの言葉を聞いて私のために諦めようとしていた恋心を伝えていたんだとしたら?

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