最後の恋、最高の恋。

もし本当にお姉ちゃんが坂口さんのことを好きなんだとしたら、私はそんなお姉ちゃんを見て見ぬふりして、坂口さんの胸に飛び込めない。



そんなに、器用じゃない。




「美月ちゃん、本当に俺は……」


私はそのあとに続く言葉が分かっていながらそれを遮った。



「坂口さん」


言葉を止められた坂口さんは、少しだけ不服そうな顔をしたけどすぐに柔らかい笑顔で「ん?」と続きを促してくれる。




「私は、もう、恋はしません」




その言葉の後、坂口さんは絶句して、部屋にはエアコンの風を送る音だけが響いていた。



「もう、嫌です。 失うことにビクビクするのも、離れていくんじゃないかって怖くなるのも、それをずっと怖がって恋愛するのは、もう嫌です」



涙腺が壊れたのか、まだ流れ続ける涙をそのままに、私はじっと坂口さんの瞳を見つめた。

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