最後の恋、最高の恋。
お姉ちゃんが彼を好きじゃなくて、彼が本当に私を好きだったとしても、私はあの日の言葉が頭から離れないだろう。
好きだと思うたびに、あの日の坂口さんの言葉を思い出して、信じられなくなったり、怖くなったり、疑ったりしてしまうとわかる。
そう思いながらそばにいるのは、きっと辛いと思うのだ。
その辛さも受け止めて、彼と付き合えるほど、私は強くない。
「だから私は、もう、恋はしません。 ……最後の恋は、もう粉々に壊れたんです」
そこまで言って私は笑った。
それは作った笑顔じゃなくて、自然とでた笑顔だった。
私が笑顔を浮かべた瞬間に、彼はまた苦しいくらいに私をその広い胸の中へと閉じ込めた。
馬鹿みたいに心臓はドキドキしてしまうけど、それでも私からはその背に腕を回すことはしなかった。