最後の恋、最高の恋。

一つ息をついた坂口さんが腕の力を緩めた隙に、私はその中から抜け出して真後ろに立っていたお姉さんに向き直って見上げると、烈火のごとく怒った顔をしたお姉さんとばっちり目があう。

美人さんが怒ると、迫力が増すんだと、身を以て実感。



「美月ちゃんも美月ちゃんよ! 学が好きだって言ってるくせに付き合えないとか恋はしないとか、バカじゃないの!?」


私の色々な苦悩の末の結論も、“バカ”の一言で片づけられてしまう。

でも、それに言い返すことが出来ないのは、怒っていながらもお姉さんの瞳に涙が滲んでいたからだ。



「春陽ちゃんに負い目があるんだかコンプレックスがあるんだか知らないけど、目の前の好きな人に手を伸ばさないなんて、本当に馬鹿よ!」

「……おっしゃる、通り、です」

「そんな意気地なしの美月ちゃんを強引にものにできない学もヘタレよ!」

「ヘタレって……」


私の左に座る坂口さんが項垂れる。

無意識に正座をしていた私と並んでいるから、二人して怒られてる図が出来上がってるんだけど、お姉さんの後ろに少し気まずそうにしながら立つお姉ちゃんの姿を捕らえた瞬間に、少し緩んでしまった気持ちが一気に引き締まった。

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