最後の恋、最高の恋。
よし、と自分に気合を入れて、ベンチから立ち上がる。
ビビッときたマグカップも買えたし、そろそろ家に帰って今日くらいは早く寝よう。
くるりと振り返って坂口さんにぺこりと頭を下げて、その場を後にしようとしたのに、
「美月ちゃん」
小さな声だから少し掠れていたけど、それが余計に色気を纏っていて、そんな声で呼ばれて思わずぴたりと足を止めてしまう。
首だけで恐る恐る振り返ってみると、坂口さんはベンチに座ったままで両肘を膝に置いて、膝の間で手を握った状態でこちらを見て微笑んでいた。
外はいつの間にか夕暮れで、夕陽の光がとても眩しいけれどその陽射しが坂口さんの表情を鮮明に照らし出している。
まるで映画のワンシーンのような光景に、間抜けにもポカンと口を開けて見惚れてしまった。
顔がいい人は何でも画になるんだな、なんて思いながら坂口さんの次の言葉を待った。