最後の恋、最高の恋。
お姉ちゃんはチラリと視線を私の左にやって、呆れたように笑った。
「美月のダメな部分をすべて知ってる学は、私なんかより美月が好きって言ってるじゃない」
肩に置いていた手をやんわり掴まれて、その手を持ったままお姉ちゃんは私を力いっぱい突き飛ばした。
私が突き飛ばされた先にいたのは、もちろん、隣にいた坂口さんで。
彼の腕の中に舞い戻らされてしまったわけなんだけど、逃げ出すより先に身体に巻きついてきた2本の腕に羽交い絞めにされてしまった。
「学とは結構長い付き合いだけど、一度も女として扱われなかった私の隣の写真の女の子に一目ぼれした男を信じて、自分の純粋な“好き”を信じてあげれば素敵な恋ができる。」
坂口さんに羽交い絞めにされている腕が目の前を覆っているせいでお姉ちゃんの姿が見えないけれど、お姉ちゃんが微かに笑った気配がした。
「私、誠人君に4年片思いしてるから、まず学に乗り換えることはないって断言できるから、安心して」
そして頭をポンポンと撫でられて、「お母さんには言っておくから、行ってらっしゃい」と訳の分からないことを言われた瞬間、身体がふわりと浮きあがる。