最後の恋、最高の恋。



「えっ、え!? 何!?」


さっきまで羽交い絞めされていたはずなのに、今私の状況は坂口さんに米俵のように担がれている。

私の視界いっぱいには坂口さんのカーキのコートの背中部分が逆さまに映っていて、その背を支えに顔を上げるとお姉ちゃんが私に向かって手を振っているのが見えて。


上下に規則正しく動いているのは坂口さんが階段を降りているからってのは分かる。


お姉ちゃんがだんだん階段で見えなくなっていくからそれはわかるんだけど、なんでこうなってるの!?

あしたも仕事だし、私スーツじゃなくてパジャマだし、携帯すら持ってないし!



「さ、坂口さん! 降ろしてください! 私明日も仕事なんですってば」

「仕事場には俺の家から行けばいいから、とりあえず美月ちゃん、一回腹割ってちゃんと話そう」


私を担いでいるというのに軽やかな足取りで玄関を出ると、家のガレージのいつも空車のところに停めてあった赤のセダンに放り込まれるように後部座席に詰め込まれて、てっきり運転席に乗るのかと思った彼が私と同じ後部座席に乗り込むのを、唖然としながら見る。

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