最後の恋、最高の恋。
坂口さんは何か小さな機械のようなものにカードを差し込んでボタンを押した。
それに反応して開いた自動ドアをくぐって更に奥へと入って行く。
ピカピカに磨かれた床を歩く坂口さんの靴音と、私の持つショップバッグが坂口さんとこすれ合って出す微かな音を聞きながら、こっそりと坂口さんを隠れ見る。
至近距離の下から見上げる坂口さんもすごくカッコイイ。
怒った顔も、笑った顔も、少しすねた顔も、照れた顔でさえ、かっこよくて、可愛くて、すごく、すき、で。
そこまで考えた瞬間、すごく恥ずかしくなって坂口さんのスーツに顔をばれないように埋めてみた。
それだけで、すごく、すごく幸せな気持ちに包まれた。
そんなことを考えているうちにいつの間にかエレベーターに乗っていて、タイミングよく到着を告げた音に顔を上げると、上に表示されていた数字は“15”だった。
このマンションに入ってから一言もしゃべらない坂口さんは、目的の場所……つまりはこのマンションにあるであろう彼の部屋へと一直線へ向かっているんだろうけど。