最後の恋、最高の恋。

私もここまで来たら逃げられないから、いい加減覚悟を決めなくちゃいけないんだけど。


もちろんちゃんとはっきりさせなくちゃいけないって分かってるんだけど。

どうしても、二の足を踏んでしまうのはなぜなんだろう。



でも、それでも前に進まなくちゃ。

勇気を出して。
自分を信じて。




……坂口さんを信じて。





「美月ちゃん」


坂口さんが自分のマグをガラステーブルに静かに置いて、その両手を膝の上で組んだ。

私の部屋に入ってきたときに乱れていた髪はそのままで、ハラリと落ちてきた髪が顔にかかってかっこいい。

コートを脱いだ下には当然スーツを着ていて、黒のありきたりなスーツなはずなのに、極上のものに見えるからすごい。

どんなに安いものでも坂口さんが着たら、ブランドの服に早変わりしてしまうに違いない。

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