最後の恋、最高の恋。

でもその顔は真剣、というよりは、微笑んでいて緊張している私を優しく包み込んでくれるような笑顔だ。


それに後押しされるように口を開く。




「私と、私の最後の恋をしてください」



この言葉は普通に“付き合ってください”と言われるよりも、重い言葉だと自分でも思う。

他人の“最後の恋”なんて、好き好んで受け入れる人はそういないだろう。


でも、彼なら、坂口さんなら。

私のコンプレックスごと好きになってくれた坂口さんならきっと……。




「美月ちゃん、俺の最後の恋人になってください」



返事には到底聞こえない、極上の告白を返事がわりにされてしまった私は、やっぱり瞬間的に顔を真っ赤に染めた。

それと同時に涙がボロボロ溢れて、子供みたいに泣きじゃくる。

そのせいでろくにしゃべれなくて、でも返事をしたい私は必死に首を縦に振ったんだけど、一瞬の早業で、ソファの下に膝をついていた私の脇の下に滑り込んできた両手が、ソファに座る坂口さんの上に向かい合うようにして抱き上げられて抱きしめられた。
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