最後の恋、最高の恋。
苦しいくらいに。
つぶれるんじゃないかってくらいに、キツく。
だから、私もさっきできなかった分まで、大きな背中に回した腕に力を込めて彼を抱きしめる。
彼の想いに負けないように、ぎゅっと。
耳から直に伝わる、彼の鼓動。
少し早く感じるそれが、彼もこの結果を嬉しく思ってくれているんだと、こうして抱きしめあっている状況に鼓動を高鳴らせてくれているんだと、教えてくれる。
「大切にする」
耳元で、少し掠れた坂口さんの声。
それに窮屈な体勢ながらもこくりとひとつ頷く。
「泣かせちゃうかもしれないけど、それ以上に嫌ってくらい幸せを感じさせてあげる」
ふたたびこくりと頷きながら、聞こえてくる心臓の音に耳を澄ませる。
トクリ、トクリ、トクリ。
聞こえてくる鼓動は、彼の声と同じくらいの安心を私に与えてくれる。