最後の恋、最高の恋。
さっきまで、もっと近くで見ていたはずなのに。
告白されたせいなのかなんなのかドキドキとうるさく心臓が鳴っている。
「やっと今日会えて、やっぱり好きだって確信した」
言いながら伸ばしてきた長い指が、私の頬にかすかに触れてバカみたいにビクリと反応してしまう。
そんな私の様子がおかしかったのか、坂口さんの口元の笑みが深まる。
そんな顔でさえかっこいいなんて、反則以外の何物でもない。
「春陽に持ってるコンプレックスごと、全部ひっくるめて美月ちゃんが好きだよ」
そこでやっとこれが冗談なんかじゃないって分かった私の頭は、何故か手の力を抜くように指令を出したらしくて、開かれた手のひらから手提げ袋がゴトリと嫌な音を立てて地面に落ちた。
「俺、欲しいと思ったものは意地でも手に入れる性質なんだ。 覚悟しろよ?」
と何やら物騒な宣言をされたことで私はハッと覚醒して、落ちた手提げ袋を慌てて拾って呼び止める声も聞こえないふりで、一目散にその場から逃げだした。