最後の恋、最高の恋。


「失礼します、先を急ぎたいので道を開けてもらえますか?」



決して大きくない声で言ったのにアッサリと道は開けて、さっきまで勢いよく詰め寄ってきていた人たちは、なぜだか熱に浮かされたような顔をしてぼうっとしていたけど、今がチャンスだと分かっていたから気にせずに足を進めて、人気のない場所を探して歩き回る。


サークルには入らないで、とにかく友達を一人でも作らなくちゃ。


そう心に決めて、迎えた初めての講義。

そこはまるで高校の時の授業とは違って、慣れるのが大変だったけれどなんとか授業内容は理解できたし、そこで一人仲のいい友達が出来た。

その人はまるで作り物の人形みたいに整った顔立ちをしていて、コイツのとる講義と同じ講義を取っている女の子たちがこぞって目をつけていると言っても過言ではないくらいの男だった。

たまたま初めての授業で、たまたま隣の席に座ったってだけだったんだけど、なぜだかすんなりと仲良くなることができた。

初めての友達が男っていうのも不思議な話だけど、なによりこの坂口学は、飾らないし一線を引いたような話し方をしない。

私に話しかけてくる人たちは、男女問わず一線を引いた付き合いをされるんだけど、学は最初から違った。

それは学の人柄もあるのかもしれないけれど。


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