最後の恋、最高の恋。


むしろ自分自身でさえ、どうしてこんな言葉が出てきたのかもわからなかったけど、呆気にとられた学とは違って、さっきまでの無表情からは想像できない位に破顔して横を通り過ぎようとした私の腕を掴んだ誠人は、アメリカ人並みの挨拶でハグしてきた。


そのハグは、大きな身体とは似つかないくらいの優しいもので、まるで大きなブランケットに包まれたような安心感があったのを今でも鮮明に覚えている。

それは私が初めて父親以外の異性に抱きしめられた瞬間でもあった。


初対面の男に、ハグされていてドキドキして戸惑って、でもそれだけじゃない。



「やっぱり完璧なわけじゃないんだよなぁ、君も人間だもんな。 うん、嫌なものは嫌って言える女の子って俺好きだから友達になろう!」


上から目線の友達になろう発言に呆れるよりもついふき出して笑ってしまったのは仕方がない。

あの威圧的な態度が嘘のようなそのフレンドリーさと切り替えの早さに、怒るという気持ちが削がれてしまったんだから。





この人も、学と同じで私自身を見てくれる人なのかもしれないと直感で思った私の感覚は正しかった。

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