最後の恋、最高の恋。


美月ちゃんは付き合って1か月経ったくらいから、俺のことを名前で呼んでくれるようになった。
敬語も抜けて、より一層距離が近くなった感じがする。



それでも俺は“美月”と呼べないでいる。

セックスの時はどさくさに紛れてそう呼んでしまうけれど、基本“ちゃん”づけだ。




それにはとくに意味はない、と言いたいけれど情けない理由があったりする。

美月、と呼ぶことでもっと俺の中で大きな存在になることが怖い。


簡単に言うと、そんな感じ。
こういう風に考えてしまうあたりが、姉さんたちから“ヘタレ”と言われる所以なんだろう。


「学、今日は学のお家に行っていい?」

「もちろん、何が食べたい?」


俺の言葉に、嬉しそうに頬を緩めた後「うーんとね」と食べたいものを考え始める美月ちゃん。

お世辞にも料理が上手とは言えない彼女は、それでも一生懸命俺のために食事を作ってくれようとするんだけど、その手つきが心配で俺も一緒に作るようになってからはこういう会話ができるようになった。

< 240 / 337 >

この作品をシェア

pagetop