最後の恋、最高の恋。

がっくりとうなだれている私のシートベルトを身を乗り出して外してくれた学は、運転席に身体を戻す時についでとばかりに私の唇を掠めていった。


「っ、」


口をおさえて学の方を振り向くと、そこには悪戯を成功させた子供のようにしたり顔で笑う学がいて、「気にしないで大丈夫」と顔とは正反対に私を気遣う言葉をくれる。


「誠人が社長サンだろうと、美月の知ってるレース編みが得意で料理の上手なクマさんだよ」

「……そう、なんだけど……」

「大丈夫、春陽の好きな人だってことの方が衝撃的事実だろう?」


すっかり忘れていたことを思いだされて、今度はシャチョーさんだってことよりもそっちの事実で頭が埋め尽くされてしまった。


やっぱりそんな私の思考の変化なんてお見通しな学はハンドルに突っ伏して声を殺して笑っている。


「……はっきり笑ってくれた方がいいんだけど」


少しふてくされながら言っても、「ごめんごめん」と涙を浮かべて笑う学を見ると、やっぱりすぐにふてくされる感情がしぼんで、もういいやって思えてしまう。

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