最後の恋、最高の恋。


だとしたら覚えているわけがない。

そういう最中は本当になにがなんだか分からなくなってしまうのだ。

それほど学は上手いんだけれど、それが過去のなせる業だとおもうと少し嫉妬してしまうのも本音で。

でもそんなことを言っていたらキリがないからそこは自分の中で折り合いをつけるようにしているけれど……。



「美月?」


名前を呼ばれてハッとする。

そうだ、ついうっかり脱線してしまったけれど、結局のところ私はいつ“何でも言うことを聞く”なんて言ったのか覚えていない。


「……ごめん、覚えてない」


素直に謝ったのに、学は目に見えて不機嫌になった。

不機嫌さを隠そうともせずに、至近距離で少し眉間にしわを寄せている学はやっぱり可愛いけれど、覚えていないものは覚えていない。

< 260 / 337 >

この作品をシェア

pagetop