最後の恋、最高の恋。



「何でも言うこと聞くって言ったよね?」


もはや屁理屈以外の何でもないし、最初の約束とはかけ離れているけれども、学の言い分は間違ってはいないし反論する余地もないので私はしぶしぶ頷きながらもガックリとうなだれた。

こんなことになるなら約束したときに“今日一日何でも言うことを聞くとかそういうのはなしね”と釘を刺しておけばよかった。

……それも今になったから思いついたことだけど、後悔先に立たずとはこのことかと身を持って実感した。



明らかに学のお姉さんのブランドだと分かる服を渡されて、これに着替えるように言われた。

白いシフォンの長袖ブラウスに、茶色のレースで出来たリボンを結んで、下は春らしい淡い桃色のプリーツスカート。
裾に黒のレースがあしらわれていてシンプルなのに可愛い。

それにオフホワイトのピーコートを羽織る。 これも袖の飾りボタンがバラをモチーフにしてあって細部まで可愛い。

ご丁寧に茶色のサイハイソックスまで入っている。

ソックスもお姉さんのブランドのものなのかブランドのロゴが黒で刺しゅうされていて、スカートと同じ黒のレースもあしらわれている。

靴は少しヒールの高い黒のローファーで、これもバラの飾りボタンがついていてお姉さんのブランドのものだと分かる。

全身お姉さんのブランドでコーディネートされた自分を鏡で見て、確かに自分好みであることは否めなかったけれどこの総額を考えるだけで意識を失いそうだ。



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