最後の恋、最高の恋。
こういう時は何を言っても教えてくれないと、今までの付き合いの中で嫌ってほど分かっているので敢えて触れない。
触れないけれど、一体なにがあるのかそればっかり考えてしまう。
……それも学の思惑通りなんだろうけど。
もう乗りなれた学のファミリーカーの助手席に乗り込んで、相変わらず音のない車内は車のエンジン音とウインカーの音、ハンドルを回す時に手に擦れる音しかしない。
いつもなら会話があるんだけれど、私は今からどこに行って何をするのか気になって仕方ないし、学は学で楽しそうに笑っているだけだ。
今通っている道も、途中までは見慣れた景色だったのに、全然見たことのない景色。
高速に乗っていないから遠くまで来ていることはないと思うけれど、道路の上にある標識を見たらもう2つ隣の県に来ていた。
普段電車や近所くらいしか行かない私には、隣の県の道なんてさっぱりわからないのも納得できるけれど、でもこの県には特に都心と比べて有名な百貨店も観光地もなかったはずだ。
付き合って分かったことだけれど、外資系の会社というのは外資系というだけあって外国に出張が多い。
去年の冬から今にかけては短い、と言っても5日くらいの出張がたびたびあったけれど奇跡的に週末には被らなくて頻繁に会えていた。
でも去年の夏は2週間近く学がドイツに出張に行っていたこともあって、その時は淋しくて仕方がなかったのも記憶に新しい。