最後の恋、最高の恋。

固まって動けないでいた私に反して、その女の人は少しも動揺しないで口を開いた。


「どちら様?」


それは私のセリフです、とは言えずに「三浦です」と馬鹿正直に名乗っちゃってる私ってどうなの。


「そう、学はいる?」


言いながらさも当然とばかりに中に入る彼女は、私の存在を気にも留めていない。

部屋に入って明らかに今まで掃除機をかけていたとばかりの状態に、納得したように一つ頷いてから、


「あなた、学が雇った家政婦? あなたの雇い主はいつ帰るか聞いてる?」


いつも学が座る黒い一人掛けのソファにさも当たり前のように座ったその女の人は、長い足を綺麗に組んで頬杖を突きながら私に問いかける。

それを立ったまま呆然と見つめる私は、本当に家政婦か何かになったかのような錯覚に陥った。


「え、えっと、今長期の出張中で……」

「そう、じゃあ掃除続けてくれていいわよ」


私の言葉を最後まで聞かずに、掃除を促してくるその美女にどうして自分が学の彼女だと言えないんだろうと自問自答する。

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