最後の恋、最高の恋。
そしてなぜ私は言われたとおりに掃除機をかけ始めているんだろうか。
確かに掃除をしようとこの家に来たわけだけど。
むしろ予定通りなんだけど。
ゴーゴーと騒音を鳴らす掃除機を引き連れて、キッチンを掃除しながら自分のふがいなさに涙がこぼれてきた。
この女の人は、学の歴代の彼女の誰かなのだろうか。
この部屋で、学のソファに当たり前のように座れるくらい親しい仲だったんだろうか。
今の学の彼女は私なのに。
学が言ってくれた言葉たちを疑うつもりなんて毛頭なくて、学が今私以外に付き合ってる人がいるなんて疑う気持ちも一切ないのに。
どうして私はこの人に、“家政婦なんかじゃなくて彼女なんです”と言えないんだろう。
ここで私が名乗れないのは、コンプレックスがどうのというよりも、学の元カノと張り合いたくない、別れた人と同じところに立ちたくないという変な意地なのかもしれない。
それでもどうしようもない嫉妬心からボロボロとこぼれる涙を、ごしごしと乱暴に袖で拭って、掃除機をかける。
どっちにしろもうすぐお母さんも来るんだし、きっとそれだけ親密だった元カノだったらお母さんにも面識はあるだろう。