最後の恋、最高の恋。

小指も入らないようなわずかな隙間から、リビングの光が差し込む。


その隙間から見えた誠人君は、大きな身体を3人掛けのソファーの上に横たわらせて、お腹の上でちくちくと何かを縫っているようだ。

その視線はまっすぐ手元に向けられていて、思わずその作りかけのものになりたいなぁ、なんてバカなことを考えてしまう。



そんな風に大切そうな瞳で見られたい。

じっとまっすぐ見つめてほしい。



そんな我儘で自己中心的な考えをしてしまうくらい、誠人君が好きなのに。

それなのに、たった一言“好きです”と言うことが出来ない。



この関係を壊すのが怖いから。



何言ってんだよ、って笑われて終わるのが目に見えてるから。



誠人君が私を何とも思ってないと、ただの友達だと思っているって傍で友達をしてきた自分がよく分かってる。

言葉にすることができない理由はたくさんあるけれど、すべてに当てはまるのが結局は自分から踏み出す勇気がないってこと。


だから私は、素直な美月が羨ましい。


素直に言葉にできて、意図してなくても自然と感情が表情に出る正直さ。

美月はそれが子供っぽいと思っているけれど、私にはない素直さが、私は欲しかった。


頭はガンガンするけれど、私の存在に気付かず黙々と手を動かし続ける誠人君から視線が逸らせずに、私はただただ誠人君を見つめていた。