最後の恋、最高の恋。
こっそり溜息をつきながら、誠人君の寝そべるソファーのサイドテーブルを挟んだ向かいにある一人掛けソファーに腰を下ろす。
座った私に誠人君は視線をチラリとくれたけれど、すぐに手元へと視線を戻してしまった。
今完璧に、友達である私が裁縫に負けた瞬間だった。
「誠人君って、ホント裁縫好きだよね」
「あー、唯一全然飽きない趣味だな」
あと料理もだけど、と言いながらも視線は手元。
話してる時は相手の目をみて話すっていう常識を、誠人君は知らないのかな。
視線をまったくこちらによこさないで集中している誠人君の意識を、少しでもいいからこちらに向かせたくて、邪魔になるとわかりつつも話しかけ続ける。
「ね、美月結構上達してたね」
「うん、上達ペースはカメより遅いけど、必死にやってくれるからこっちも教えがいがあるよ」
軽く口端をあげたものの、やっぱり視線は手元だし手は動き続けたまま。
でも今度は私が話しかけなくても、会話を続けてくれた。
「そのテーブルの引き出しに、美月ちゃんが送ってくれたやつがあるんだけどさ、見てみ?」
言われたとおり、サイドテーブルの引き出しを開ければ、出てきたのはフェルトで出来たお守りみたいなものだった。