最後の恋、最高の恋。
分かってる。
私の気持ちは誠人君を困らせるだけだって、分かってた。
だから今まで隠し続けてきたんだもの。
友達のままでいいと、言い訳しながらずっと隠してきたんだもん。
「春陽……」
トドメを刺してほしいと願ったくせに、いざ答えを言われそうになると怖くて、私は誠人君の言葉を遮るように「誠人君っ」名前を呼んで、返事を待たずに「帰るね」と力なく言った。
持っていた鞄は見当たらない。
でも誠人君のマンションは、自宅からそう遠くないから歩いて行けるはずだ。
さっきまで痛かったはずの頭は、この状況ですっかり忘れ去られていた。
おい、と呼び止める声を聞こえなかったふりして、リビングから玄関へと小走りに向かう。
ほら、ふらつかないし、大丈夫。
これくらい、大丈夫。
玄関のロックを開けたところで、後ろから大きな手が再びロックをかけた。
「おっまえ、酔ってるクセして帰ろうとするなよ」
ほら、帰るなら明日帰れ、とわたしの腕を掴んでリビングへ連れて行こうと私の手首に簡単に触れる。
優しいね、誠人君。
そんな不器用な優しいところが好きだけど、今はその優しさがつらいよ。
私は誠人君に簡単に触れることができないくらい、好きなのに。
誠人君はなんでもないように私に触れる。
想いの差を突きつけられてるみたいで、悔しい。