最後の恋、最高の恋。
「美月ちゃんから連絡があって、春陽の家誰もいないみたいだから、帰って酔ったお前を介抱する人いないぞ」
引っ張る腕をなんとか足に力を入れて連れて行かれまいとしているのに、力の差は歴然でずるずると確実にリビングへ連れ戻されてしまう。
「私、そんな子供じゃない。 自分のことくらい自分で出来る」
そう、出来るもの。
私はたいていのことなら自分で出来るんだから。
「子供じゃないって言うやつが、そんな簡単に泣くか?」
俯いて隠していたのに、誠人君は私を覗き込んでそう言うと、空いている方の手で涙袋をなぞるように涙を拭って少し笑った。
どうしてそういうことを簡単にするんだろう。
私をもっと好きにさせて、どうするんだろう。
「くやしい……」
「なにがだよ」
思わずついて出た悪態も、笑って取り合ってくれない。
どうしてそんなに普通なの?
どうしてさっき私が言ったことをなかったみたいに振る舞えるの?
くやしくて。
くやしくて。
それでもすきで。
私は目の前にあった誠人君の頭を掴まれていない腕で引き寄せると、生まれて初めてのキスを誠人君に捧げた。