最後の恋、最高の恋。
まだ少し残っている目じりの涙に口を寄せて、しょっぱい涙を舐めとる。
そのままさっきまでむさぼっていた唇に触れて、乱れた黒髪を手で整えてやる。
腕の中にすっぽり納まる春陽は、寝ていても俺の心を揺さぶった。
本能に従って、思い知るとか、どれだけ野獣なんだよ俺。
友達のフィルターでしか見てこなかった、いや、友達という枠から外さないようにしていたという方が正しいかもしれない。
そうしていたのは、春陽の言葉を借りれば“フラれて一緒にいられなくなる”のが分かっていたからだろう。
付き合えたからといってずっと一緒にいられるという保証はない。
別れれば友達に戻ることは難しいし、そこで春陽との縁はなくなる。
それが分かっていたから、自分の中に微かにくすぶっていた気持ちに蓋をして、春陽を友達だと思い続けて今まで来た。
でも、春陽の告白をきっかけにその蓋がこじ開けられた。
好きだと言われて、驚いたけれど込み上げる嬉しさにそれ以上に驚いて、繰り返される告白とキスに理性が崩されて、本能に自分の気持ちを自覚させられるなんて。
「春陽、俺……」
寝ている春陽の額に自分のそれをくっつけて、囁くように春陽がくれた言葉とおなじ言葉を紡いだ。
口にすれば呆気ないほど、それが自分の中に浸透する。
どうしてその気持ちが自分の中にあったことにすら気づかなかったのか。
それほどまでに、春陽への想いが溢れて困惑さえする。
「やっべぇ。 帰したくねぇな」
ずっと腕の中に閉じ込めておきたい。
「……むしろこの家に住めばいいのに、春陽の手料理美味いもんなぁ」
一人呟きながら、腕の中の春陽を覗き込んで、滑らかな頬をなぞってその感触を楽しむ。
瞼に、頬に、額に、鼻に、そして唇にキスをして。
すればするほど、愛おしさが増える。
こうやって眠る春陽を抱けるのは俺だけでありたいとか。
触れられるのは俺だけでいい、他の男に触れさせてやるもんか、とか。
思春期のガキみたいな思考が頭を埋め尽くして、でもそれ以上に腕の中の存在を大切にしたいという想いが溢れるのだ。
「確かにこの独占欲は子供みてぇだな」
自分の思考に苦笑いしつつ、もう一度柔らかな唇にキスを落とした。