最後の恋、最高の恋。
まるで私が手を回すのを待っていたかのように、私の手が背に触れた瞬間にキスの雨がやんで、おでこをコツンとぶつけられる。
こんな間近で覗き込まれることなんてなかったから、私はどこを見ていいのか分からずに、目の前の真っ黒な瞳とぶつからないように視線をうろうろさせてしまう。
「春陽、おはよ」
なにか言われるとばかり思っていたのに、誠人君からでた言葉はありきたりな挨拶で。
それにガッカリしながらも小さく「おはよう、ゴザイマス」と返す。
「頭は? いたくねぇ?」
重ねて問われた言葉で、そう言えば昨日あり得ないくらいに呑んで頭が痛かったことを思いだすくらいに目覚めはスッキリで頭も特に痛みを感じない。
だから素直に頷けば、誠人君は「よし、酒抜けてんだな」と笑った。
もしかして、昨日の告白も、キスも、酔った勢いだと思われているのだろうか。
だとしたら、あれほどまでに伝われと想いを込めた必死な行動も、すべて無駄だったということになってしまう。
それだけは嫌で、アレは本心だということを伝えようとしたとき、
「酒抜けてるのにさっき俺のキスに応えたってことは、昨日のあれは偽りなくお前の本心だって思っていいんだよな?」
誠人君が私が予想していたこととまるで逆のことを言った。
……確かに、今お酒が抜けているか確認したってことは、つまりはそういう答えを導き出すこともできるけれど、誠人君がどういうつもりで私にさっきあんなことをしたのかが私には分からない。