最後の恋、最高の恋。


「ひっさしぶりだなぁ、ガっくん」

「奥空いてる?」

「空いてる空いてる、いつでも空いてる」

「なんで美味いのに誰も来ねぇの?」

「一切宣伝してないからじゃね?」


手をつないだままの私たちを出迎えてくれたのは、ここの店主と思われる顎髭をはやした体格のいい男の人だった。

黒いエプロンをかけて、顎髭にボサボサの髪をしていて、クマさんみたいだ。

それにしても、宣伝をしないで店を出してるなんて儲けがあるのかこっちが心配になってしまう。


坂口さんの背中越しにこっそり観察していると、クマさんと視線がぶつかって慌てて会釈をする。


「お? なんだなんだ? がっくんのコレか?」


途端ににやぁっと笑みを浮かべて小指を立てるクマさん。

その様子に若干引き気味な私を引っ張って、坂口さんはクマさんのことを無視して店の奥へと進んでいく。

クマさんはそんな坂口さんに何も言わずに、チラリと振り返った私にひらひらと手を振ってくれた。

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