最後の恋、最高の恋。


「ホント、素敵な人だよ。 私なんか逆立ちしたって敵わない」


残りを一気に飲み干した。 


そう、ホント敵わない。

小さいころから、ずっと。

お姉ちゃんは憧れで、目標で、そして決して越えられない壁だ。


「よしわかったわっ!」


綺麗にネイルされた指をパンと合わせて、何かを思いついたお姉ちゃん。


「私がいい人紹介してあげるっ!」

「……いいよ、いらない」


お姉ちゃんの友達って言ったら、お姉ちゃんも卒業した有名大学卒業の人とか、今お姉ちゃんが働いている外資系の頭のいい同僚の人だもん。
そんな人、絶対に話合わないし、絶対にみんなお姉ちゃんに惚れてるに決まってる。

そう思ってしまうのは、この23年間ずっとお姉ちゃんに負け続けてきた結果なんだと思う。


「そんなこと言わないで、会ってみるだけ会ってみて? 付き合うなんて言わなくていいから友達になって、そこからどんどん輪を広げていけばいいじゃない」


きっと美月のまわりの輪の人たちは、みんな見る目がないのよ、と息巻くお姉ちゃんに逆らえるわけもなく、お姉ちゃんの提案通り、次の日曜にその人に会うことになった。

< 5 / 337 >

この作品をシェア

pagetop