最後の恋、最高の恋。
「ホント、素敵な人だよ。 私なんか逆立ちしたって敵わない」
残りを一気に飲み干した。
そう、ホント敵わない。
小さいころから、ずっと。
お姉ちゃんは憧れで、目標で、そして決して越えられない壁だ。
「よしわかったわっ!」
綺麗にネイルされた指をパンと合わせて、何かを思いついたお姉ちゃん。
「私がいい人紹介してあげるっ!」
「……いいよ、いらない」
お姉ちゃんの友達って言ったら、お姉ちゃんも卒業した有名大学卒業の人とか、今お姉ちゃんが働いている外資系の頭のいい同僚の人だもん。
そんな人、絶対に話合わないし、絶対にみんなお姉ちゃんに惚れてるに決まってる。
そう思ってしまうのは、この23年間ずっとお姉ちゃんに負け続けてきた結果なんだと思う。
「そんなこと言わないで、会ってみるだけ会ってみて? 付き合うなんて言わなくていいから友達になって、そこからどんどん輪を広げていけばいいじゃない」
きっと美月のまわりの輪の人たちは、みんな見る目がないのよ、と息巻くお姉ちゃんに逆らえるわけもなく、お姉ちゃんの提案通り、次の日曜にその人に会うことになった。