最後の恋、最高の恋。
「……パスタが絶品なんじゃなかったんですか?」
小物から視線を戻して、目の前の坂口さんを見ながら聞いてみるけど、
「パスタも絶品なんだけど、それ以上にピザが美味いんだ。 キッチンの向こうにある窯で焼いてんだよ」
……だったら最初からピザが美味しいって言えばいいのに。 って言わなかったのは、坂口さんが悪戯が成功した後のような、してやったりな笑顔だったから。
「じゃあそれにします」
って素直に従えば、クマさんを呼ぶこともしないで座ったまま、
「本日のパスタとマルゲリータ」
と少し大きめな声で注文して、背中の方からは「りょーかい」という気の抜けたような返事が返ってきた。
きっと二人は知り合いなんだろうけど、なんだかお店に来たって雰囲気じゃなくて、肩ひじ張らない空気が心地いい。
それに起き抜けに出掛けたからお昼ご飯食べてないし、とってもお腹がすいた。
……もしかして、それすら見越したうえでこの店を選んだんだろうか。