最後の恋、最高の恋。
「まぁた美月はそんなこと言って、美月は私にないものたくさん持ってるっていつも言ってるのに」
「お姉ちゃん、そりゃ何個かあるかもしれないけど確実に私にないものをお姉ちゃんが持ってる数の方が多いよ」
へらり、笑ってカップの中身を飲み干した。
「お姉ちゃん、ここ奢ってね。 私帰るからあとは二人でごゆっくり」
椅子をひいて、席を後にしてひらりと手を振ると、悲しそうに眉を下げるお姉ちゃんと、なぜか神妙な顔つきでこっちを見つめる坂口さんの4つの瞳と目があう。
それを振り払って、喫茶店を後にした。
坂口さんにチャンスをあげたんだから、あんな顔される意味が分からない。
むしろ邪魔者がいなくなって喜んでくれると思ったのに。
「大人の男の考えることは分からん」
溜息まじりに呟いて、人の溢れる雑踏の中へと足を踏み出した。