教師失格!?
5月――事件勃発
「あっ、水野せんせーい!」
後ろから聞こえてきたバタバタという足音と脳天気な声に少しうんざりしながら振り向くと、予想通り、そこにはへらへらした笑顔をうかべた理科教師、相馬がいた。
通りかかった生徒に「廊下は走っちゃ駄目ですよ」とからかわれている。
「あれー? どうしたんですか、ムスっとしちゃって」
「相馬先生がへらへらしすぎなんですよ」
「えー、そうですかぁ?」
言いながら相葉は、良く言えば無邪気な、悪く言えば阿呆っぽい表情で笑う。
「ていうか、何か用ですか?」
「ああ、えっと、水野先生が担任持ってるのって、2年3組でしたよね?」
「そうですけど」
「3組って、次の時間、理科でしたよね?」
「違います」
水野が言うと、相馬はえっと大きな声を上げた。
「何で!?」
「いや、なんでって……」
それはこっちの台詞だ。今日は理科の授業変更はないし、時間割が変わったばかりということもない。
「おっかしいなー、絶対そうだと思ったんだけど……」
言いながら首を捻る相馬を見ながら、ふとあることに気がついた。
「あの、相馬先生、僕の思い違いかもしれないんですけど、先週も同じようなこと聞きませんでした? 確か先々週も、その前も」
「あ、やっぱりですか? なんか前もこんなことあったなーって思ったんですけど」
言いながら相葉は、悪戯がばれた子供のような表情でへへへと笑った。その脳天気な様子に少しいらっとしたが、そんなことをいちいち気にしている暇はない。そもそも、この男に対していちいちいらついていたらキリがない。
「確か1組が次の時間理科じゃなかったですか?」
「あ、そうか! 1と3ってちょっと似てますもんね!」
「全然似てないです」
「えー、でも、3に1刺したら、串団子っぽくなりません?」
……分からない。
どうしてそのような発想に至るのか、そしてどうして串団子になったら似ていることになるのか……。これはコイツの発想があまりに阿呆すぎて凡人の俺には理解できないということなのか、コイツの阿呆が俺に伝染したせいで物事を理解する能力が低下してしまったのだろうか……。
「じゃ、ありがとうございましたー!」
ぼんやりと考え込んでいると、相馬のそう言う声が耳に入ってきた。振り返ると、もう相馬は1組の教室へと向かっていた。
アイツと話すと何故かどっと疲れたような気分になるから不思議だ。
気を取りなおして職員室に向かおうとして、何かが頭にひっかかる感じがした。忘れたことを思い出せそうで思い出せないときの感覚。
なんだったっけか――そう考えはじめた正にその瞬間。
水野の後ろの1組の教室から、女子達のものと思われる悲鳴が聞こえてきた。
後ろから聞こえてきたバタバタという足音と脳天気な声に少しうんざりしながら振り向くと、予想通り、そこにはへらへらした笑顔をうかべた理科教師、相馬がいた。
通りかかった生徒に「廊下は走っちゃ駄目ですよ」とからかわれている。
「あれー? どうしたんですか、ムスっとしちゃって」
「相馬先生がへらへらしすぎなんですよ」
「えー、そうですかぁ?」
言いながら相葉は、良く言えば無邪気な、悪く言えば阿呆っぽい表情で笑う。
「ていうか、何か用ですか?」
「ああ、えっと、水野先生が担任持ってるのって、2年3組でしたよね?」
「そうですけど」
「3組って、次の時間、理科でしたよね?」
「違います」
水野が言うと、相馬はえっと大きな声を上げた。
「何で!?」
「いや、なんでって……」
それはこっちの台詞だ。今日は理科の授業変更はないし、時間割が変わったばかりということもない。
「おっかしいなー、絶対そうだと思ったんだけど……」
言いながら首を捻る相馬を見ながら、ふとあることに気がついた。
「あの、相馬先生、僕の思い違いかもしれないんですけど、先週も同じようなこと聞きませんでした? 確か先々週も、その前も」
「あ、やっぱりですか? なんか前もこんなことあったなーって思ったんですけど」
言いながら相葉は、悪戯がばれた子供のような表情でへへへと笑った。その脳天気な様子に少しいらっとしたが、そんなことをいちいち気にしている暇はない。そもそも、この男に対していちいちいらついていたらキリがない。
「確か1組が次の時間理科じゃなかったですか?」
「あ、そうか! 1と3ってちょっと似てますもんね!」
「全然似てないです」
「えー、でも、3に1刺したら、串団子っぽくなりません?」
……分からない。
どうしてそのような発想に至るのか、そしてどうして串団子になったら似ていることになるのか……。これはコイツの発想があまりに阿呆すぎて凡人の俺には理解できないということなのか、コイツの阿呆が俺に伝染したせいで物事を理解する能力が低下してしまったのだろうか……。
「じゃ、ありがとうございましたー!」
ぼんやりと考え込んでいると、相馬のそう言う声が耳に入ってきた。振り返ると、もう相馬は1組の教室へと向かっていた。
アイツと話すと何故かどっと疲れたような気分になるから不思議だ。
気を取りなおして職員室に向かおうとして、何かが頭にひっかかる感じがした。忘れたことを思い出せそうで思い出せないときの感覚。
なんだったっけか――そう考えはじめた正にその瞬間。
水野の後ろの1組の教室から、女子達のものと思われる悲鳴が聞こえてきた。