聖夜の奇跡
「拓人は今年のクリスマスは彼女と過ごすの?」
清水美希(しみず みき)は、目の前で自分が作った夕飯をがっついている幼なじみの中西拓人(なかにし たくと)にさりげなく聞いた。
「あー、それはないかな」
「ごほっごほっ、は!?え、なんで?」
思わぬ返答に飲んでいたお茶でむせてしまった美希は、声を詰まらせながら聞き返す。
「大丈夫かよ。まぁ、あれだよ。別れた……っつうかフラれたんだよ」
だんだんと小さくなっていく拓人の声だが、美希にははっきりとその言葉が聞き取れた。
「そっか……」
美希は手に持っていたコップをテーブルに戻しながらそれだけ呟いた。
というより、それ以上何も言えなかったというのが正しい。
なぜなら、悲しんでいる拓人を余所に、不謹慎ながら嬉しく思ってしまっていたのだから。