聖夜の奇跡
化粧を落とし、すっきりした香澄は化粧室から出た。
そして、ようやく自分の右隣に誰かが座っていることを認識した。
(そういえば、結婚とか聞こえてきてた気が……ああ、他にお客さんいるのにスッピンになれるなんてわたしも女すててるよね)
自嘲しながら自分の席へと戻る。
「ちょっと、あんたフラフラしてるけど、大丈夫?」
危なげに歩く香澄を心配して奥さんが声をかけてきた。
奥さんと話をしていた柏木も香澄に視線を向け、驚いた表情をした。
ボヤけてしか見えていない香澄はそんなことには気付かない。
「おばちゃん、大丈夫だよ。コンタクト外しちゃって視界が少し悪いだけだから」
香澄は無事席に戻ると、デザートにアイスとホットコーヒーを頼んだ。