聖夜の奇跡
「でも、声はわたしの好きな人にそっくりだから……」
「好きな人……ですか?」
「そう」
「その人とは……?」
「うーん、今はアメリカで頑張ってると思う。実は5年前にわたしからふっちゃってるんです」
香澄は自嘲した。
「彼の足枷になりたくなくて、好きな人できたから別れてなんて嘘ついて。自分から別れを告げておいてずっと片想いしてるなんてばかみたいでしょ?」
香澄がふふふと力無く笑うと、タイミングを図ったかのようにアイスとコーヒーが目の前に出された。
(いい香り……優介、今ごろどうしてるのかな…………)