聖夜の奇跡
そこには、淡い桃色にアゲハ蝶が描かれた和柄の生地が見えた。
少女はその着物は本当に自分に作ってくれたんじゃないかと勘違いするくらい、これからの自分に色と柄がぴったりだと感じていた。
「お兄さんって変……こんなの普通知らない子になんかあげないよ。…………でも、貰ってあげる……」
「そう?良かった。君がもらってくれなきゃ一生着てもらえない着物になるところだったよ。じゃあね、君の幸せを祈ってるよ」
少年はもう一度微笑むと別れを告げ、その場を後にした。
「お兄さんのおかげで、少しだけ元気になれた。ありがとう」
少女は立ち去る少年の背中に向かって小さな声で呟くと、貰った着物を大事そうにぎゅっと抱き抱えた。