そんな顔すんなよ
慶輔と並んで歩く。コイツも随分でっかくなりやがった。体だけじゃなく態度も。
慶輔と途中まで登校するのはいつものこと。いつもの朝の風景に変わりない。
変わったのは…俺の心の中だけ。
「……何か話せよ、慶輔」
「は?俺!?」
「沈黙って苦手」
「てゆうか兄貴が話せよっ」
「俺はいつも聞き手だから」
そう、いつも凉菜の話を聞くだけなんだ。
一人でマシンガントークを続ける凉菜の隣で、時折返事を返すのが日課。
それがまた心地よくて、安心する時間なんだ。
だから、ずっと沈黙なんてない。バカみたいな凉菜の笑顔も傍にあって、何とも言えない温かさが溢れているんだ。