そんな顔すんなよ
そして気がつけば、いつもの分かれ道に着いていた。
「じゃあな、兄貴」
「おう。気をつけろよ」
「……兄貴こそ…」
シュン
「む、無理すんじゃねーぞ!」
何かを投げた途端に、慶輔は走り出した。
そして、俺の手の中には小さな棒キャンディがあった。何だコレ。俺、子供じゃねーんだけど?
だけど、慶輔の不器用な優しさが伝わってきた。
「慶輔!」
俺の声が届いたのか、離れたところで慶輔の足が止まった。
「……バーカ!」
弟に励まされるなんて恥ずかしいから、礼なんて言わない。
「あ、兄貴こそバカだろ!」
負けじと言い返す慶輔。
「慶輔!」
「あんだよ!」
「キャンディじゃ足りねーよ!」
意味もわからない言葉を発したが慶輔から言われた。
「今の兄貴には、そのキャンディがお似合いだ!」
ってな。