そんな顔すんなよ
てゆうか、実を言うと…まだアイツの泣き顔を見たことが1度もない。喜怒哀楽の哀だけを見たことがないわけだ。
凉菜はいつもニコニコと笑って、俺の心臓を乱してくれる。
「明日、行っちゃうんだね」
「あぁ」
「見送りとか行くの?」
正直、慶輔に言われるまでそのことは何も考えていなかった。
引っ越しまであと何日だってカウントダウンはしてたけど、本当に引っ越す実感がなかった。
「今が居心地が良すぎて、何も考えてなかったとか?」
へへっと笑いながら俺の心理を読み取る我が弟。残念ながら図星だっつの。
『優輔ー!朝だにょーん♪』
同時に、いつもより早めに設定していたアラームが朝を告げた。