そんな顔すんなよ
手を繋いでいても、隣でお前が昨日のお笑い番組について話していても、明日への不安は消えない。
朝の寒さが心まで凍えさせる。マフラーも手袋も心までは温められない。
ギュッ
そんな時、凉菜が少し強めに手を握ってきた。
「急ごう。遅刻しちゃうよ!」
「え…」
「ほら、走って!」
なぁ…俺、時計持ってるけど、まだ遅刻にはほど遠い時間だぞ?何でそんなに急ぐんだ?
嫌われたのかよと思いつつ、凉菜の隣を走った。そしてチラッと凉菜を見た。
………え?
凉菜の目が微妙に潤んでいた。朝日のせいじゃない。光のせいじゃない。
『寂しがり屋な凉菜をよろしくね♪』
凉菜母の言葉が頭を過った。母親って、やっぱり何でも見透かしてんだ。