そんな顔すんなよ
タオルやスポーツドリンクを準備しながら、ごめんって兄貴!と謝る慶輔。
でも実際、慶輔の言ってることは間違っちゃいない。俺は小心者なんだ。
彼女との別れに、まだ整理がつかない自分がいることが情けないんだ。
「じゃ、行ってくる!」
ボーッとしているうちに、慶輔が家を出ていった。と思ったら
「兄貴!凉菜ちゃんに本当は寂しいんだよって素直に伝えるべきだからな!」
再び戻ってきた。わざわざそれを言うために帰ってきたのかよ。
「……いいから早く行け」
あえて玄関には行かず、小さく呟いた。慶輔の優しさがくすぐったかった。
母さんもいつもより早い出勤だったのか、干し忘れの洗濯物が散乱している。
やれやれ、ここは兄貴のお出ましか。俺は重い足を動かした。