そんな顔すんなよ
「だから、慌てて公衆電話見つけて連絡したんだけど…」
「……ざけんな」
「え?」
「ふざけんなよ」
ブチッ
俺は慶輔からの電話を切って、直ぐ様鍵を閉めて家を飛び出した。
『夕方に出発するんだ』
ふと凉菜の声が蘇る。じゃあアイツは嘘をついてたってわけか?
何で?
何で、知らせてくれなかったんだよ。
彼氏には…俺には会いたくないのか?もう姿も見たくないのか?声も聞きたくないのか。
俺は違うぞ。
最後までお前の姿を焼き付けて、声だって身体中の神経をスピーディーに回転させて記憶させたい。
ただ、純粋にお前に会いたい。
そう…ただ、会いたい。
俺は無我夢中で凉菜の家を目指した。